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2017/05/05

うつ病とは?:うつ脱出のための基礎知識①


うつ病に苦しむ方に、しんどい中で学んでもらう知識は、うつ病からの脱出に役に立たなければ、意味がありませんよね。
自分をどう治療したらいいのか、それがわかるような、うつ病の見方が必要です。
うつ病は、健常なヒトの機能の、どこが、どう、低下している状態なのか?

早速、はじめましょう。

健常なヒトの「4つの機能」

ヒトの見方はいろいろありますが、ここでオススメするのは、
ヒトに「できること」、ヒトの機能を、たった4つに整理する方法です。

信じる 考える 感じる 動く

このの4つです。

この4つの機能が、まるで、直列につないだ電池のように、
しっかりかみ合うと、ヒトは、健全に機能します。

うつ病とは、ヒトの4つの機能が低下したカタチの1つ

逆に言うと、この4つの機能のどこかが、機能低下し、
直列の流れが、乱れると、健康を害した状態になります。
うつ病とは、その1つのカタチです。


※4つの機能について、詳しくは↓
習慣を変えるには:行動を変えるだけではダメな理由

うつ病の本質:脳の「チェーンが外れた」状態とは

ここで、重要なポイントは、
「動く」の中の、「脳」、その機能低下です。

これを、当院では、自転車のチェーンが外れた状態、とたとえています。
必死でペダルを踏むのに、ぜんぜん、進まない。
この感覚が、うつ病になったときの、異常事態の感覚に、似ています。

どんなに周囲が叱咤激励しても、どんなに本人が必死に努力しても、
頭も、からだも、思い通りにならない。
精神科医は、この症状を「制止」と言います。
この症状をもって、精神科医は、この状態を「疾患」と認識します。
叱咤激励ではなく、「療養」が必要なのです。

でも、この理解が、
本人も含めて、大多数の方にとって、たいへん難しい。

無理もありません。
自転車のチェーンが外れていることは、見れば一目瞭然ですが、
脳の中で起きていることは、目には見えませんからね。

詳しくはこちら↓
うつ病の治し方で最初に知るべき3項目

さて、ここまでご理解いただければ、
うつ病で起きていることが、クリアに見通せるようになります。

うつ病というトンネル

⚪️トンネルの入口

うつ病は、何も前触れなく、突然はじまることはありません。
4つの機能のどこかに、過大な負担がかかると、その機能が低下し始めます。
その典型的な状況は、次のようなものです。

【こころが折れる出来事】
・信じていものに裏切られる
・大切な人やものを失う
・何かに失望する
⬇️
信じる」の機能低下

【自分を否定される出来事】
(バランスのとれた思考ができなくなる)
・自分の責任によるミス
・他人からの強い叱責
⬇️
考える」の機能低下

【強い感情の体験とその抑制】
・恐ろしい体験をしても、それを誰にも言えない
・強い怒りを感じてても、それを表現できない
【身体の強い痛み】
・内科、外科の病気による痛み
⬇️
感じる」の機能低下

【生活リズムの乱れ】
・過労、多忙、不摂生
【経済的な不安】
・減給、解雇
・売上不振、倒産
【対人関係の質・量の変化】
・結婚、離婚、出産
・退職、転職、栄転、降格
・転居
⬇️
動く」の機能低下

もちろん、一つの出来事が、複数の機能の低下を引き起こすことも稀ではありません。

⚪️トンネルの中

4つの機能が低下すると、そのダメージの蓄積で、チェーンが外れます。
チェーンが外れると、4つの機能がさらに低下する、という悪循環が生じます。
脳は、心身全体のさまざまな機能を司っています。
チェーンが外れることの帰結は、甚大です。

脳の機能が低下する(チェーンが外れる)
⬇️

【生存本能の低下】
・生きててもしょうがない
・死にたい
⬇️
信じる」の機能のさらなる低下

【脳の情報処理能力の低下】
・集中力、判断力、言語処理能力の低下
・感情に関する情報処理の低下
・対人関係処理能力の低下
⬇️
考える」「感じる」「動く」の機能のさらなる低下

【自律神経系の失調】
・睡眠覚醒リズムの失調:不眠、過眠、浅眠、日中の眠気
・消化管のリズムの失調:食欲低下、過食、味覚の異常、便秘、下痢
・交感/副交感神経のバランスの失調:体温調整・発汗の異常、常にイライラ、頻尿
・筋緊張度の維持の低下:動作緩慢、おっくう
・疼痛閾値(痛みの感度)の変化:頭痛、肩こり、胃痛、腹痛、関節痛
⬇️
感じる」「動く」の機能のさらなる低下

これが、うつ病のトンネルの中で起きていることの、実情です。

図にまとめると、このような状況です。


うつ病とは、大病なのです。

では、このトンネルから脱出するには、どうすればよいでしょうか?

うつ病の治療:その原則とは?

いままでのご説明で、すでにお察しのことと思います。
1:チェーンをかけ直す
2:かけ直したチェーンが外れないようにする
これに、尽きます。

具体的には、こちらを参照ください。↓
うつ病の治し方で最初に知るべき3項目

その記事を要約すると、
・チェーンをかけ直すのは、「自己治癒力」である。
・治療とは、その自己治癒力を促進するものを用意し、阻害するものを排除すること。

それを踏まえると、つまり、
1:チェーンをかけ直す
➡︎チェーンを外す原因となった4つの機能の低下を、回復させ、チェーンがかかるのを待つ
2:かけ直したチェーンが外れないようにする
➡︎4つの機能を、今後は機能低下しないように、現状よりパワーアップさせる。

え?ちょっと、肩透かしをくらった感じでしょうか?
地味すぎる…(苦笑)

確かに、そうなのです。
でも、だからこそ、世には無数と言えるほどの、
「〇〇でうつが治った」という情報があふれているのです。
だって、この地味なことが、ちゃんとできたら、うつは治るから。

と同時に、その情報を一般化した時点で、ウソになります。
なぜなら、4つの機能の低下のカタチは、ヒトそれぞれで、
その回復に有効なものも、ヒトそれぞれだから。

ボトルネック」という言葉、ご存知の方もおられると思います。
瓶のくびれている部分のことです。
どんなに瓶詰めの機械を改善しても、
ボトルネックが細いままだと、結局、瓶詰めにかかる時間は改善しない。

「〇〇でうつが治った」という場合、
〇〇が、その方の4つの機能の低下を、回復させるボトルネックに
ヒットした、ということです。

つまり、キャッチフレーズは、
チェーンをかけ直すための、
自分のボトルネックを探せ!

ただし、ここで大問題があります。
この地味なことを、どんなに続けても、
まったく回復しない状況が、あるのです。

それは、例えて言うなら、
外れたチェーンが、外れたまま、ロックがかかった状態、です。
これは、恐ろしい…。

うつ病のトンネルの中で、いつまでも脱出できない、
そのような方の中に、ロックがかかった状態の方、おられます。

精神科の医療は、このロックを外すための治療を、研究してきました。
これが、いわゆる「生物学的治療」と言われるものです。

具体的には、
抗うつ薬などの薬物療法や、
修正型電気けいれん療法・mECT
磁気刺激療法・TMSなどの非薬物療法です。

抗うつ薬の最もカシコい使い方は、
このロックを外す必要があるヒトだけに、
その目的のためだけに、投与する、ということです。

これを、投与する側も、される側も、
理解し、実践できたなら、
抗うつ薬に関する臨床上のあらゆるプロブレムは、消滅します。

同時に、このようにカシコく投与された抗うつ薬だったとしても、
効果は限定的です。効かない方も、おられます。

そこに、修正型電気けいれん療法・mECTや
磁気刺激療法・TMSの出番があるわけです。
詳しくは、こちら↓
うつ病の最新の治し方:磁気刺激療法(TMS)とは何か

さて、脱線しましたね。もどしましょう。

つまり、うつ病の治療の原則は、
0:ロックがかかっているなら、まず、ロックを外す
1:そのチェーンをかけ直す
2:そのチェーンがまた外れないようにする

そのために、
ヒトの4つの機能、その低下を回復させるための、
自分のボトルネックを探せ!

まとめ

この記事で、あなたは次のことを学びました。

⚪️うつ病を理解するために、ヒトを、4つの機能のつながりと考える。
⚪️それは、信じる、考える、感じる、動く、の4つ。
⚪️うつ病は、その4つの機能が低下した状態の、一つのカタチである。
⚪️特に、脳の機能の低下は、「自転車のチェーンが外れた状態」とイメージする。
⚪️さらに、そのチェーンが外れたまま、ロックされた状態があり得る。
⚪️うつ病は、4つの機能のどこかが低下した結果、チェーンが外れ、
⚪️チェーンが外れた結果、さらに4つの機能が低下していく、とう悪循環の状態である。
⚪️その治療は、ロックを解除し、チェーンをかけ直し、外れないようにすること。
⚪️そのためには、4つの機能を回復させるための、自分のボトルネックを知ることが必要。
⚪️特に、ロックを解除する必要がある場合、抗うつ薬、磁気刺激療法・TMSなどをカシコく使う必要がある。

基礎知識の続きはこちら↓
あなたのうつ病のタイプは?:うつ脱出のための基礎知識②