精神科のセカンドオピニオン

精神科のセカンドオピニオン

セカンドオピニオン

セカンドオピニオンとは

セカンドオピニオンとは、「病気の診断と治療に関する、主治医以外の医師の、第二の意見」を意味します。
典型的な状況は、外科の領域で、次のようなものでしょう。(架空のケースです)
主治医:あなたは胃癌です。手術が必要です。
患者:手術以外の方法がないか、他の医師の意見も聞いた上で、判断したいと思います。
〇〇病院の△△先生に紹介状をお願いします。
主治医:わかりました。

(セカンドオピニオン後)
パターンA
患者:△△先生も、先生と同じご意見でした。手術をする決心ができました。お願いします。
主治医:わかりました。
パターンB
患者:△△先生は、胃癌であり、手術が必要なことは間違いないが、胃を全部、摘出する必要はないとおっしゃいました。
先生はどうお考えですか?
主治医:確かに、部分摘出の選択肢もあります。が、それでは、再発のリスクが高いと考えます。
患者:それは、△△先生もおっしゃいました。
でも私は、食べること、その楽しみをどうしても、大切にしたい気持ちがあります。
主治医:そのお気持ちは、わかります。再発のリスクをご理解の上であれば、部分摘出も、よいでしょう。
患者:お願いします。
パターンC
患者:△△先生は、▢▢大学病院なら、臨床治験で、腹腔鏡の手術ができるとおっしゃいました。
是非、その方法で、手術を受けたいのですが。
主治医:よいと思います。紹介状をご用意しましょう。
これが、セカンドオピニオンを活用した、より満足度の高い医療が実践されている、理想的な風景です。
ポイントは、どこにあるのでしょうか?
  • 1胃癌という疾患では、治療法の選択肢のメリット、デメリットが、比較的、患者にも理解しやすい。だから、医師と患者が、共通の議論の土台に立ちやすいと言えます。
  • 2最初の主治医の意見も、十分な医療水準に達している。 だから、セカンドオピニオンを求める原動力が、主治医への不満ではない。
  • 3患者が、自身の価値観のありどころを、明確に自覚している。
  • 4そして、その価値観を守るために必要な情報を、自ら得ようと動く、その勇気と行動力がある。 つまり、患者が、一人の個人として自立している、と言えます。
  • 5セカンドオピニオンを主治医と検討できる、健全な医師ー患者関係が成立している。
  • 6そこでは、主治医も患者も、よりよい医療を目指した共同作業者である。
この風景は、精神科でも、見ることができるのでしょうか?

こんなことでお悩みではありませんか? 

  • このお薬を飲み続けて、よくなるだろうか?これは、副作用じゃないだろうか?
  • 先生は、よくなっていると言うけど、なぜ、しんどいのだろう?
  • お薬以外の治療法は、ないのだろうか?そもそも、診断ってなんだろう?
  • 私、病状が軽く見られているんじゃないだろうか?
  • 先生が「トラウマが・・〇△×」って言ってたけど、どう言う意味?
  • このままで、復職・就職できるだろうか?
  • 実は、私、発達障害なのだろうか?
    でも、先生は忙しそうだし、とてもこんなこと、聞けない・・・
精神科のセカンドオピニオンとは

精神科のセカンドオピニオンとは

残念ながら、かなり難しいのが現状です。 先ほどの架空のケースと対比しつつ、なぜ、難しいのか、ご説明しましょう。
  • 1
    精神疾患は「目に見えない」ため、どの治療法がどこに効いているのか、患者は理解しにくい。
    だから、精神科医と患者が、共通の議論の土台に立つためには、わかりやすい例えを活用するなどの精神科医の工夫が不可欠。
  • 2
    短時間の診察で、訴えた症状の数だけ内服が増える、という医療水準に甘んじる場合が多い。
    だから、セカンドオピニオンを求める原動力が、現在の精神科医療への不満となる場合が極めて多い。
  • 3・4
    精神疾患の病状により、患者が、自身の価値観や行動力を奪われ、自立できなくなっている状況が多い。
  • 5
    そのため、医師ー患者関係は、硬直したものとなりがち。患者は、精神科医に対して、泣き寝入りか、依存か、崇拝か、処方せんだけもらえばいいという割り切りか。いずれにせよ、セカンドオピニオンをともに検討する、という関係にはなりにくい。
  • 6
    精神科の治療の場合、精神科医自身の「存在感」「人柄」が、治療の一環とならざるを得ない。だから、よりよい医療を目指した共同作業の中には、精神科医自身の、それら特性についての、自省が求められる。これを患者本人や、他の精神科医の意見を交えて行うには、その精神科医にかなりの力量が必要。
このような事情で、架空のケースのようなセカンドオピニオンは、精神科では、かなりまれです。
実情は、以下のような場合が多いです。

主治医に不満があり転医したいが、とても切り出せず、紹介状もお願いできない。
転医先の候補を見つけたが、相性や、治療方針が合うか、それも不安。まず、一回受診してみて、決めよう。

このような受診を、現状の精神科医療では、セカンドオピニオン、という他ありません。

しかし、当院では、できるだけ、架空のケースのような、「よりよい医療を目指した共同作業」となるよう、次の点に配慮しています。
  • まず、勇気をもって受診したことを、ねぎらう。
  • 患者さんが、自分のゆずれない価値観を守るために起こした、セカンドオピニオン。その行動自体を、現主治医に戻ろうが、転医しようが関係なく、一期一会の治療の機会として活かすように努力する。
  • 現主治医の診断と異なる診断となっても、患者さんが混乱しなように、十分に説明する。
  • 現主治医の治療で、効果的であったことも、しっかり、評価する。
  • その上で、どの症状に対して、どんな取り組みが、どんな変化を生むことが期待できるのか、見通しを伝える。
また、現在、当院に通院中の患者さんでも、他院へセカンドオピニオンを希望される場合、遠慮なく、お申し出ください。 今までも、紹介状をご用意し、転医するか相談し、転医して頂いたケースもあります。
精神科のセカンドオピニオンの実際

精神科のセカンドオピニオンの実際

では、勇気を出してセカンドオピニオンを受けた場合、どんなメリットがあるのでしょうか?
当院での実際のケースを、個人情報に配慮したかたちで、ピックアップしてみましょう。
  • 中年男性、診断:躁うつ病→統合失調症

    • 統合失調症による被害妄想に左右された攻撃性が、躁状態と誤診されたケース。
    • 少量の抗精神病薬の調整で、長年苦しんでいた、統合失調症による希死念慮が消えた。
  • 中年男性、診断:躁うつ病→
    うつ病+自閉症スペクトラム障害

    • 自閉症スペクトラム障害によるこだわりと怒りっぽさが、躁状態と誤診されたケース。
    • 副作用の出ていた抗精神病薬を減薬し、自閉症スペクトラム障害の心理教育で、怒りっぽさは改善。
  • 若年女性、診断:躁うつ病→複雑性PTSD

    • 学童期のいじめによる複雑性PTSDの感情コントロール不全が、躁状態と誤診されたケース。
    • トラウマに対する精神療法で、怒り発作が改善。
  • 若年男性、診断:うつ病→統合失調症

    • 初発時の精神病状態が見落とされたまま、統合失調症後抑うつを、通常のうつ病と誤診されたケース。
    • 抗精神病薬の導入と調整で、抑うつ状態が改善。
  • 若年女性、診断:統合失調症→
    解離性障害+境界型人格構造

    • 解離性障害+境界型人格構造による興奮状態が、統合失調症の興奮状態と誤診されたケース。
    • 副作用の出ていた抗精神病薬を中止し、心理教育と精神療法で、興奮状態がなくなった。
  • 中年女性、診断:うつ病+境界IQ→
    うつ病+境界IQ+境界型人格構造

    • 境界型人格構造による自傷行為や過量服薬が、境界IQの特性によるものと誤診されたケース。
    • 境界型人格構造についての心理教育と、夫婦関係への介入で、問題行動がなくなった。
  • 中年男性、診断:躁うつ病の抑うつ状態→
    躁うつ病の混合状態

    • 混合状態を見落とし、それ対する薬物調整が行われず、病状が長引いていたケース。
    • 混合状態に対する抗精神病薬の鎮静を十分行い、その後、減薬し、躁うつ病が寛解した。
勇気を出して、一歩を踏み出しましょう。
セカンドオピニオンを得ることは、あなたの権利です。

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