2022/03/27
身体リテラシー入門㉔:「根源的な不安」を「滑空」するとは?
さて、身体リテラシーのシリーズ、
今回は24回目で
ようやく最終回です。
前回はこちら↓
太極拳に取り組んだB子さんの
半年後の様子をシェアしました。
「ふんばる」や「すばやい」などの
からだの動きを通じて、
・身体とのコミュニケーションを図り、
・身体運動のチャンネルを開発し、
・身体感覚のチャンネルの「キャパ」を広げ、
その結果、
エッジの向こうにあると感じていた
根源的な不安や加害恐怖という
内受容感覚が、
まずは、加害恐怖の方から
緩和していった、
という報告でした。
今回は、予告通り、
ある臨床心理士の先生の
名言をヒントに、
このシリーズ全体を
まとめることができる、
あるイメージをお伝えして、
このシリーズを
終えたいと思います。
・・・
早速、その名言を
ご紹介します。
「人の一生は崖から落ちるようなものだ」
「あとは落ちる(死ぬ)しかない」
「でも人間にしかできない落ち方があるはすだ」
というものですね。
皆さん、
いかがですか?
こんな夜が更けてから
そんな話するな!のお叱りとか、
このシリーズと
何の関係があるんだ!?とかの
ツッコミが来そうです・・・。
その点をまずは
補足します。
そのために、小椋の
ちょっとした経験を
シェアしますね。
・・・
中学の頃、水泳部に所属して
競泳の練習を毎日やっていましたが、
ある時、飛び込みの選手との
合同練習があって、
なんと、高さ10mの
高飛び込みの塔の上から、
水深5mの真下のプールまで
飛び込むことになりました。
裸足で、
競泳用の水着一枚で
コンクリートの板の上に立つと、
普段は見たことのない
俯瞰するアングルから
遠くの市内が見えて
ビュービューと風がキツい。
下をのぞくと、
すごく、仲間が小さく見える・・・、
股間がゾワゾワします・・・。
意を決して、
しっかり目を開いたまま、
足から、棒のようになって
落下していきます。
意外に、時間がかかる。
ものすごい空気の圧、というか
下から吹き上げるという感じの圧が
ずーっと続く。まだなのか?
視界はというと、一瞬にして
風景画を大きな刷毛で
下から上に一気に
ストロークしたように、
上下に引きちぎれた感覚になっている。
ズボッという音、というか体感が、
お尻の割れ目に水着が
食い込む感覚とともに
衝撃波のように伝わってきて
着水・・・、
水深3m以上のところまで
めり込んで、
ゆっくり浮上して、生還。
・・・
この体験をご紹介した意図は、
落下中の
「ものすごい空気の圧」、
この感覚を
共有したいからですね。
何のために?
そこで、
先ほどの名言に戻ります。
「人の一生は崖から落ちるようなものだ」
「あとは落ちる(死ぬ)しかない」
「でも人間にしかできない落ち方があるはすだ」
つまり、人が生きているとは、
落下中だ、ということですね。
もちろん、これは比喩ですが、
先ほどの小椋の体験談を重ねると、
リアルな比喩だ、ということが
見えてきます。
落下中に感じる、あの
「ものすごい空気の圧」。
それがつまり、
生きているだけでつきまとってくる、
このシリーズの出発点となった、
あの、「根源的な不安」の
リアルな比喩に、
なっているわけです。
人が生きているとは、
死に向かって落下中なのであって、
そこから
「ものすごい空気の圧」という
根源的な不安が、
こちらへ吹き上がってきている・・・。
そんなの最悪・・・。
・・・
だから、私たちの文化は、
それをなかったことにする
仕組みをたくさんもっている、
とも、お伝えしました。
一緒に落下する、
相手の目を見続けていれば、
その圧を、忘れることが
いっとき、できなくはない。
あるいは、10mからの落下なら
数秒だが、
人生の場合なら数十年は、続く・・・、
その間、慣れも
生じるかもしれない・・・。
上下に引き裂かれる
周囲のほんとうの風景を見ずに、
好きなドラマや音楽などを
煙幕のように張り巡らせて、
落下中であることを、忘れることが、
これまたいっときなら、
できなくはない。
それが、悪いわけではない、
というよりも、必要だ、
ともお伝えしてきました、
「守り」を先にしよう、
というテーマでしたね。
でも、その「守り」をすり抜けて
「ものすごい空気の圧」が
それでも襲ってくる時、
どうする?
それが、このシリーズでは
「攻める」テーマで
お伝えしてきたわけです。
どう、攻める?
・・・
名言の最後の一文を
もう一度。
「でも人間にしかできない落ち方があるはすだ」
それって、例えば
どういうことでしょうか?
読者の方は、
どんなイメージがわきますか?
小椋がオススメするイメージを
お伝えしますね。
スバリ、
ムササビ、ですね。
???
長い手足の間に
膜があって、それを広げて
滑空できる哺乳類、です。
※それって、人間じゃないじゃん!
というツッコミはなしで(苦笑)
つまり、
吹き上げてくる
ものすごい空気の圧を、
手足を広げて、
グライダーのように滑空する、
そして、垂直落下で
地上に激突するのではなく、
延々と、激突を回避しつつ、
でも、落下し続けていることは
熟知しつつ、
地上すれすれでも滑空を続け、
最後、トントントン、とバウンスして
ザザザザザァーと着地する(苦笑)
・・・
この、滑空する、というイメージを
お伝えしたくて、
ここまで話を引っ張っています。
落下中の、ものすごい空気の圧が
吹き上げてくる中、
手足を広げてからだ全体で受けとめる・・・、
それって、ものすごく
勇気がいります。
滑空って、
勇気がいります。
でも、このシリーズの終盤、
「戦う」エネルギーのテーマで
お伝えしたのは、
この勇気と直結しています。
滑空って、
吹き上げてくる
ものすごい空気の圧と、
からだを張って、
コミュニケーションを取りながら
バランスを修正し続けて、
墜落を回避し続けることですから。
つまり、
ものすごい空気の圧との
「格闘技」なのです。
吹き飛ばされそうになったときには
「ふんばる」し、
垂直落下しそうになったら
「すばやく」姿勢を
調整する必要がある。
でも、ここからが
重要です。
うまくバランスを取ることができたら、
その、ものすごい空気の圧は、
自分の滑空を支えてくれる、
唯一の力になってくれる、
ということ。
安定して滑空できている、
その瞬間を、
想像してみて下さい・・・、
その圧が、
支えてくれているわけです。
なんとも、
矛盾してますよね。
お前はいつか墜落するぞ・・・、
それを呪いのように示し続ける
ものすごい空気の圧
(つまり、根源的な不安)が、
それとの格闘技を
制することができたなら、
自分の最後の日までの滑空を
支えていてくれる、唯一の、
落下という人生の旅の
同伴者になってくれる・・・、
そういうわけです。
そして、その滑空中、
余裕があれば、
(そして、そんな瞬間も
いつか来ます・・・)
眼下に広がる風景は、
ものすごく、美しいでしょう、
いつか、
ザザザザザァと
着地はしますが・・・。
・・・
身体リテラシーを通じて
内受容感覚を育てると、
この、滑空のスキルが
修得できるよ、
それが、最も本質的な
「根源的な不安」に対する
対策になるよ、
これが、このシリーズの
最終的なメッセージに
なるわけです。
・・・
根源的な不安に
さいなまれている時、
それと共生するための
身体リテラシーのスキルに
取り組むにあたって、
Do:
生きるとは
ムササビや
ハンググライダーのように
滑空することだ、と
イメージしてみる。
Don’t:
根源的な不安に向かって
手足を広げて受け止めるなんて
無理だ、と落ち込む。
※このシリーズでも
「守り」の中でのチラ見を
オススメしています。
いきなり、滑空態勢に
飛び込まなくても大丈夫です。
<編集後記>
前回で予告したように、
太極拳以外で、
身体運動のチャンネルを開発し、
その結果、内受容感覚を
育てることができる、
そんな身体ワーク、
何があるでしょうか?
というテーマで、補足しますね。
そもそも、今回の
「名言」の出典は、
小椋が共感する臨床心理士の先生が
出演している動画、ですね。
こちら↓
その先生が、気功を指導されている風景も
カットで入っています。
気功も、優れた身体ワークになります。
ダンベルや
ベンチプレスなどでの
筋トレ、けっこう、ありです。
対人恐怖で
引きこもり状態の青年の方、
わりと、多いです、
筋トレきっかけに、
外出ができるようになるパターン。
また、人工の壁面を簡単な装具で
よじ登る、ボルダリングというスポーツ、
複数名の方、取り組んでおられます。
水泳で、根源的な不安と付き合っている、
という方もおられました。
それがドラムだ、という方も
複数名、おられます。
それが、エイサーだ
(沖縄の伝統芸能の踊り)という方
これまた、複数、おられました。
夜、人がいないとき、
川辺のサイクリングロードを
自転車でぶっ飛ばす、という方も
おられました。
けっきょく、なんでもありか?
(苦笑)
実際、そうなんです。
自分に合っているかどうか。
自分の直観を信じてみましょう。
いかがでしたでしょうか?
同じ悩みをお持ちの方は、
ぜひ一度、お問い合わせください。