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2018/07/05

解離性障害とは


さて、今回は、
世の中にあまり
認知はされていませんが、

また、
精神科医やスタッフの間でも
誤解されていることも多いですが、

それでも、クリニックで
そこそこの頻度で
その患者さんにお会いする、
解離性障害(かいりせいしょうがい)
についてのお話です。

・・・

TVドラマなどで、
こんな場面をご覧になったこと
あると思います。

あまりの恐怖に、
顔面蒼白になって、
女優さんが、パタッと倒れ込んで
意識を失ってしまう。
でも、しばらく声をかけ続けると、
意識をとりもどす。

これ、
迷走神経反射
ですね。

強い刺激により、
一時的に血圧が低下し、
意識を失ってしまう状態です。

でも、
血圧が低下しなくても、
意識を失ってしまう場合があります。

そして、数時間も、
意識が戻らない…
呼吸はしているが、
声をかけても、腕をつねっても、
ぜんぜん反応しない。

そして、ある時、フッと、
意識がもどる。

これ、
迷走神経反射ではなく、
解離性失神(かいりせいしっしん)
と言います。

・・・

解離性失神では、
何が起きているのでしょうか?

もちろん、本人は、
わざとやっているわけではないし、
その間の記憶もありません。

ただ、
意識のスイッチは、
完全に切れている。

そうなることで、
耐えられない現実に、
直面しなくても済んでいる。

耐えられない現実とは、
典型的には、
外界からの脅威、
それによる恐怖、でしょう。

だから、解離性失神とは、
本人は無自覚でも、
生命体としての、
自己防衛反応、と言えます。

・・・

解離性失神では、
意識のスイッチが
完全にオフになっていますが、

完全にオフにならない、
部分的にオフになっている、
という状態がありえます。

平たく言うと、
ボーッとしている状態、ですね。

これ、
解離性の意識変容状態
と言います。

この状態のもとで、
解離性障害に特徴的な症状が、
いろいろ、出てきます。

例えば、
離人症(りじんしょう)。

自分の手足や、
周囲の家具、
会話している相手など、
その現実としての存在感が、
とても希薄に感じられる、
そんな状態です。

自分と現実との間に、
まるで膜が張られているような、
本人にとっては、
とても苦痛です。

そして、
解離性健忘(かいりせいけんぼう)。

ある一日の記憶が、
まるまる、ごっそり、ない。

重症だと、
数年間の記憶が、
まるまる、ごっそり、ない、
という場合もあります。

当然、その期間は、
ちゃんと、
生活、できているわけです。

でも、その期間中、
解離性の意識変容状態にあったため、
記憶のスイッチが、オフになっていた、
だから、記憶がない、
というわけです。

はたまた、
解離性遁走(かいりせいとんそう)。

解離性健忘の状態で、
遠方まで旅をしてしまう。

京都から、下関まで
バイクでぶっ飛ばして、
そこで、数日過ごした、
という方、知っています。
(その間の記憶が、
まったくないのですが)

そして、
解離性同一性障害
いわゆる、多重人格

これは、
解離性の意識変容状態で、
別の人格が立ち現れる。

そして、
もとの人格に戻った時、
その別人格の記憶は、
まったくない、というもの。

人格が切り替わるとき、
一瞬、ボーッとなる場合が
多いです。

スマホに例えるなら、
メインのアプリが、
フリーズしてしまい、

その間、
別のアプリが立ち上がり、
正常に機能するが、

そのアプリも、また、
いずれフリーズしてしまう。

そして、
メインのアプリが
再起動した時、
さっきまで動いていた
別のアプリのデータには
まったくアクセスできない。

実際、
多重人格の方の脳の中では、
それに相当することが、
起きていると想定されていますね。

・・・

そんなこと、
あるわけがない、
本人が演技しているだけだ、
と信じて疑わない
精神科医もいます。

それくらい、
一般常識にとらわれたセンスでは、
共感しにくい状態なのでしょう。

でも、元来、
解離性の意識変容や、
その究極の状態である、
解離性の失神は、
自己防衛反応なのですから、

決して、
稀な現象ではないはずです。

だから、かなり、
見過ごされているのだろうと、
小椋は考えています。

・・・

治療の方針は、

まずは、
解離という自己防衛反応を
繰り出さずともよい、
安心できる環境の確保と、

再び、
耐えられない現実に
直面した時にとれる、
別の自己防衛反応の開発

ということになりますね。

・・・

さて、
解離性障害と診断された
PSMの方に接する時、

Do:
症状は、
解離性の意識変容という
自己防衛反応なのだと理解し、
その苦悩に共感する。

Don’t:
症状は、
すべて演技だと誤認し、
見下すような態度をとる。

いかがでしたでしょうか?
同じ悩みをお持ちの方は、
ぜひ一度、お問い合わせください。